えほんや 作家さんの想いを伝えるインタビュー特集

第3回「自分が好きな感じを大切にして、様々な絵本を描きたい」

作家:中村 景児

2013年2月

第3回は、えほんやアプリで『大きな かぶ』を描かれている 中村景児(なかむら けいじ) さんにインタビューをさせて頂きました。

Q1. 中村さんの作品は、ファンタスティックな作風が印象的ですが、イラストレーターになられたきっかけはいつ頃ですか?

 
えほんや
▲楽しさが伝わる幻想的な作品
そうですね。父親がカメラマンで、親戚もクリエイティブな職業についていたので、自然と自分も幼い頃から物をつくるのが好きでした。現在、弟は粘土で作品を作っているんです。父親の仕事の関係で、九州の中で10回小学校を転校したんですが、全て楽しい思い出だったんです。鹿児島工業高校の工芸科でグラフィックの基礎を学び、その後、桑沢デザイン研究所で2年学びました。
 就職はおじの会社に入り、店舗建築のグラフィックを学んだのですが、その後デザインの会社でロゴやマークのイラストを2年半作っていました。チョコレートのパッケージのデザインなんかは、昔はエアーブラシを使って1日かけて描くんです。とても楽しかったですね。
 その後、独立してイラストレータになったんです。元々不思議な感じの作品を描きたいと思っていましたので、独創的な絵や作品を造るようになりました。子供向けの雑誌のさし絵を頼まれた際は、最初描けなかったんです。同じ号に3作描かなくてはいけなくて、子供向けの絵を描いている方にどうやったら描けるのか聞いてみました。そうしたら 『自分が楽しめれば、何かが伝わる。』と教えてもらったんです。それからは、自分で楽しみながら集中して描けるようになりました。



Q2. 小学校の時に10回も転校されて、それが全て楽しい思い出になっているなんて、とても前向きで素敵ですね。そんな中村さんだからこそ、楽しいイラストに仕上がるのでしょうね。今回の電子絵本『大きなかぶ』について、エピソードなどはありますか?

 
えほんや
▲丁寧に描かれた鉛筆線
パソコンを全くやらないんです(笑)紙の絵本は何回も経験があるのですが、電子書籍は初めてでした。スキップの原さんからのお話だったので受けました。原さんは、こちらに任せてくれるので、のびのびできました。自由に描かせてくれるので、とても描きやすかったです。原さんとやるのが楽しかった! わくわくしながら作品を描いたんです。
 『大きなかぶ』は、動物が主人公で、動物が好きなので楽しく描けました。シチュエーションがあまり変わらないので、登場する動物の表情の描写に苦心しましたね。絵を描いているときは、あまり考えないでシーンが思いついたら描いています。
 紙の絵本の場合は、印刷の際に葉っぱの色などが沈むと思って明るめに描いていますが、今回のアプリでは出したい色がそのまま出せて大変満足しています。紙の絵本と電子書籍はお互いの長所がありますが、電子書籍は今後当然増えると思います。そこに参加できたことは、それはとても嬉しいですよ。『えほんや』と検索するだけで、アプリの作品が紹介されるので、世界中の人に見てもらいたいと、とてもワクワクしています。 人が喜ぶのが好きなので、沢山の方に見てもらって楽しんでもらいたいです。



Q3. アトリエには、イラスト以外にも陶芸や沢山の作品が製作中ですね。松葉杖がありますが、どうされたのですか?

 
えほんや
▲アトリエには作品がいっぱい!
手作りが好きなので、なんでも作っちゃうんですよ。自分の絵を飾る額も自分で作っています。病院へ行く際に、お薬手帳を入れるものが無かったら、ミシンで作ったり、なんでも作ります(笑)
 松葉杖は、集中して作品を作ってアトリエにこもり続けると、歩けなくなっちゃうんです。普段は朝の2時から夕方5時まで集中したりしますが、もっと時間が足りなくなると、前日の夜10時から、翌日の午後5時まで続けて作業したりするんですね。そうすると、しばしば松葉杖の助けを借ります。普段はこの通り元気なんですよ。
 あと、料理も大好きなんですよ。どんなに忙しくても、毎日夕方5時にはキッチンに立って何か作っています。料理はストレス解消になります。人の喜ぶ姿を見るのが好きなので、自宅でパーティーをする時も、ひたすら作っています(笑) 車の運転も好きなのですが、例えばスキーに行くときなんかは、ワゴン車を出してみんなを迎えに行って、帰りに送るのが好きでしたね。
 妻とは職場結婚だったんです。インターネットなんかは妻が見てくれたり、色々とアドバイスをしてくれるので助かっています。今回のお仕事がとても楽しかったので、これからも自分が好きな感じを大切にして、様々な絵本を描きたいと思いました。


多くの方に笑顔を届けてくれる中村さんの素顔は、とても気さくな少年のようでした。貴重なお話を、どうもありがとうございました。



(取材:2012年6月 取材・文:渡辺 陽子 中村景児さんのアトリエ「STRATEGY HEADQUARTEWS COMPANY」にて)

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